先輩からのメッセージ
 

やればできる、必ずできる

川崎汽船株式会社
人事グループ人事チーム勤務
昭60営 田代 英治


私は、一九八五年に経営学部を卒業し、同年に川崎汽船株式会社に入社、現在に至っています。在学中は、宮下ゼミに所属し、海運論を専攻しました。入学した一九八一年はちょうど神戸でポートピア81が開催されており、神戸の町は世間の注目を集めていた時期でした。九州の片田舎から出てきた私は、教養部時代はあまり学校に足が向かず、社会勉強として色々なアルバイトに精を出していましたが、専門に上がってからは興味の持てる授業には積極的に出席し、ゼミにも毎回参加していました。

 自分の就職活動を振り返ると、四年生になって就職を考え始めた頃はUターンして地方公務員を考えていましたが、海運論のゼミに所属していて業界のことをよく知っていたこと、また、単純に海、船、海外への憧れから、海運業界に志望を変更しました。当時海運業界は、構造不況業種の一つに数えられており、過酷な国際競争によって大転換を迫られている状況でした。業界自体の知名度が低く、海運業界を志望しているというと変わり者の学生と思われていたことでしょうが、そういったことはあまり気にせず、自分が興味が持てること、ロマンを感じられることを対象に仕事ができることに満足していました。将来性という面もあまり気にしませんでした。とにかく今自分の気持ちを大事にしようと考え、そうすれば後で自分の選択を後悔することはないだろうと考えました。入社してから今日に至るまで、決して順風満帆ではありませんでしたが、過去を振り返って後悔したり、悩んだりすることはありません。先が見えない時代でもあり、自分が何をやりたいのか、或いは何に興味が持てるのかそういった案外単純な動機から就職というものを考えてみてはどうでしょうか。

 私は、入社後営業部門などを経験し、今は人事グループに勤務しています。仕事がら学生の皆さん(もちろん神戸大学の後輩諸君とも)と接触する機会も多いのですが、我々の時代よりも総じてよく勉強し、様々な体験をし、そして面接でのアピールもとても上手であると感じています。若干物足りないのは、個性的な学生が昔より少なくなったという点です。会社も永続的な発展を目指す以上、若くて独創性をもった新しい血を必要とします。新卒採用では、即戦力というよりも将来大化けするような可能性が感じられる原石を重要視します。即戦力は中途採用で補えばよいと思います。我々は、目先のことにとらわず、常に将来を見据えた、視野を広くもった学生の皆さんとお会いするのを楽しみにしています。世界は今大転換の時代を迎えています。この難局を、ぜひ皆さんとともに乗り切っていきたいと思っていますので、共に頑張っていきましょう。その他、少し具体的になりますが、学生時代に、語学力と国際感覚に磨きをかけることは、我々のような業界だけでなく、今やあらゆる職業で必要だと思います。特に語学力があると仕事に対して積極的になることができると思いますので、ぜひ実行して下さい。

 私は、どちらかというと控えめな性格で、世界を舞台とする海運業のようなスケールの大きな仕事についていけるか、という不安も少々ありました。しかし、仕事を通じて様々な経験を積むことによって、自分なりに成長できたと感じています。特に二十代後半から四年間営業部門に勤務して、試行錯誤しながら、新規開拓に日夜取り組んでいたころは、自分でもやればできると自信がついてきました。新聞記事をもとに今までお付き合いのない会社、食品、自動車部品、電機メーカーなどをドアノックして、最終的に輸送契約までこぎつけたことも結構ありました。会社の上司も好きなようにやらせてくれましたし、自分に向いていないと思われる仕事でも、プラス志向で辛抱強くやっていけば、活路は開けると思いますし、自己の成長に繋がると思います。

 私事で恐縮ですが、一年前から法律の勉強を始めました。人事部にいて労働法に興味をもったことと、司法試験受験指導校のカリスマ講師の話を聞いて憲法について大いに興味を惹かれたことがきっかけです。定年で終わるような職業生活にしたくありませんので、会社勤めが終われば、次は独立して自分の価値観で、世の中の役に立つような仕事をしていきたいと考えています。夢は寝てみるものではなく、実現するものだと思います。「やればできる。必ずできる。」とはカリスマ講師の口癖ですが、この言葉を信じて、愚直にやっていこうと思っています。仕事だけではなく、それとは別に自分の打ち込めるものや夢を持ち続けていれば、充実した人生が送れるものと思います。そして、学生時代やもっと若いときにそれに気づけば更に良かったと思います。学生の皆さんは、残りの人生の時間もたっぷりあり、無限の可能性があります。それだけでも大きな財産です。それを有効に使うか、無駄にしてしまうかは皆さん自身の手の中にあります。ぜひ後で後悔しないように、日々の生活を充実させるうに頑張って下さい。私も蔭ながら応援しています。

凌霜 357号掲載文(2003年5月)より