凌霜第436号 2023年01月10日

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凌霜四三六号目次

 

表紙絵 昭34営 中 村 克 彦

カット 昭34経 松 村 琭 郎

 

◆年頭にあたって   大 坪   清

目 次

◆母校通信   中 村   保

◆六甲台だより       行澤一人、鈴木 純、清水泰洋、四本健二、村上善道

◆本部事務局だより   一般社団法人凌霜会事務局

 ホームカミングデイの開催/新野幸次郎先生追悼/秋の叙勲

 ご芳志寄附者ご芳名/事務局への寄附者ご芳名

 会費の銀行自動引き落としへの移行のお願い/新入会員

◆(公財)神戸大学六甲台後援会だより(71)

◆大学文書史料室から(45)   野 邑 理栄子

◆学園の窓

 研究科長就任にあたって   宮 尾 龍 蔵

 あなたなら何をしますか   赤 星   聖

 着任に際して   佐久間 智 広

◆新野幸次郎元学長記念植樹等の贈呈式(ご報告)   新野幸次郎先生追悼行事委員会

◆六甲アルムナイ・エッセー

 日本史研究は面白い~「京都人」より「京都通」を目ざして~   中 島 孝 和

 神戸大学からのギフト   斉 藤 由 香

◆表紙のことば 京都御苑の雪景色   中 村 克 彦

◆凌霜ネットワーク

 異業種交流会の開催   辻 本 健 二

 令和4年硬式テニス部の健闘   奥 田 眞 也

 投てきサークル・跳躍ピット完成!   絹 田 清 昭

 不動産凌霜会(関東エリア)の立ち上げにご協力のお願い   野 田 敬 二

◆六甲台就職相談センターNOW 働きがい改革―マスから個へ―   浅 田 恭 正

◆学生の活動から

 2022年度六甲祭を終えて   星 川 智 子

 近江商人の里を訪ねて   前 田 悠 翔

◆凌霜ひろば

 不完全性定理再考   三 浦 清 司

 ゴメス「虹の橋」を渡る   西 岡 慶 則

◆本と凌霜人 『職業会計人の独立性』   坂 本 孝 司

◆クラス大会 一八会、一休会、凌霜24回、凌霜40回

◆クラス会 しんざん会、イレブン会、むしの会、神戸六七会、互礼会

◆支部通信 東京、京滋、大阪、奈良県、神戸、岡山

◆つどい 日本拳法部、東京六甲クラブ囲碁会・神戸KUC囲碁クラブ、

     大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、大阪凌霜俳句会、

     凌霜川柳クラブ、神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 名古屋凌霜ゴルフ会、芦屋凌霜KUC会、花屋敷KUC会

◆物故会員

◆国内支部連絡先

◆編集後記   行 澤 一 人

◆投稿規定

年頭にあたって

一般社団法人凌霜会理事長 大  坪     清

(レンゴー㈱代表取締役会長兼CEO)

 

  凌霜会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。各地で穏やかに、そして健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申しあげます。

 凌霜会は1924(大正13)年9月に設立され、今年で99年目を迎えます。諸先輩方が築き上げてこられた凌霜の歴史を守っていくとともに、次代を担う若い凌霜の皆様へ歴史と伝統を引き継いでいけるよう、そして会員各位にとって有益かつ有意義な組織であり続けるよう、会の運営に全力を尽くす所存です。皆様方には、これまで以上のご支援ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。

 

 昨年も、年初より新型コロナウイルスに翻弄された一年となりました。しかしながら10月からは全国旅行支援がスタートし、日本各地の観光地は再び賑わいを取り戻しつつあり、また入国制限も大幅に緩和され、円安効果も相まって街中で外国人観光客を見かけることも多くなりました。コロナ禍以前の状態への回復はまだこれからではありますが、経済面での回復は着実に進んでいることを実感しています。

 2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、世界経済に大きな打撃を与えたのみならず、人間の行動様式さえも変えてしまいました。観光やレジャー、飲食といった余暇の過ごし方が制限されたのはもちろんのこと、人と会い、意見を交わすという人間としての基本行動そのものが大幅に制限されたことは、特に若い世代の方々にとっては取り返すことができない損失につながったと感じています。

 この3年間で負った傷が癒えるまでには相当の期間が必要になると思われますが、すべてがマイナスであったかというとそういう訳ではなく、一方ではリモートワークやオンラインミーティングといった多様な働き方が広まったことにより働き方の改革が大きく進み、また一方では人と人とのリアルなつながりの重要性に改めて気付かされた、というようにプラスの面も少なくないと考えます。またウイルスの流行局面において対応するノウハウが蓄積されたことにより、今後未知の感染症が流行することがあっても、パニックを起こさず、冷静かつ適切に対応することができるのではないでしょうか。

 今後新たな変異株が発生する恐れもあり、油断することなく引き続き適切に感染対策を講じていく必要はありますが、このようなプラスの面にも目を向けながら、かつての状態を取り戻していくために、ウィズコロナの中で我々一人ひとりがしっかりと経済を回していくという自覚を強く持ち、行動に移していく必要があると考えています。

 

 このように、コロナ禍についてはようやく光が見えてきましたが、昨年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻により、世界は危機的状況、クライシスに陥っています。当初ロシアは短期で終結させるとの目論見でしたが、ゼレンスキー大統領の確固たる意志と同国民一丸となっての徹底抗戦、それに呼応した西側諸国からの最新型の武器供与等により戦闘は長期化し、先を見通すことが非常に難しい状況となっています。

 ロシアは資源大国であることから、同国に対する経済制裁は諸刃の剣となり燃料をはじめとしたさまざまな物資の価格高騰を引き起こし、その影響は世界全体に拡散するとともに、侵攻の長期化に伴い経済面での損失は深刻さを増しています。

 今回の侵攻は、国連安保理常任理事国であるロシアが、国際法秩序を揺るがす武力による現状変更に踏み切ったものであり、世界中に衝撃を与えました。このような蛮行に対しては世界全体が結束して対峙していかなければなりませんが、グローバル化したサプライチェーンからロシア一国を切り離すことは難しく、また各国の利害関係が複雑に絡み合っていることからロシアへの経済制裁の足並みは揃っておらず、世界の分断はより一層深まっていると感じます。

 加えてわが国においては、ウクライナ侵攻の成り行きが中国や北朝鮮の行動に与える影響も懸念されるところです。これまでは日米安全保障条約により平和が確保されていると信じられてきた面がありますが、今のウクライナの状況をみれば、自分の国は自分で守るという信念と、それを実行する能力があってはじめて自国の領土と国民の安全を確保することができる、ということが明らかになりました。憲法上の問題や様々な考え方の相違はあれど、わが国の国益を第一に考えた場合、真に必要なことは何なのか、真剣に議論し実行に移していく必要があると感じています。

 

 数年来、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)への取り組みが注目されています。企業においては、性別や年齢、障碍、国籍といった属性のみならず、価値観やライフスタイルといった個性も尊重し、多様な働き方を可能とする制度を整備していくことが求められています。しかし、これは何も企業に課せられた責任に留まるものではありません。「生産性とは心の持ちようである(Productivity is above all things a state of mind)」と言われます。人材の多様性を認め、それを受け入れて活かすことが、個人の力を最大限に発揮させ、ひいては生産性の向上につながっていきます。

 また、わが国の実質賃金は、欧米諸国が上昇していくなか、この30年間減少傾向が続いています。企業は誰のものか、という議論がありますが、私はやはり第一には従業員のものであると考えています。日本には「三方よし」という考え方がありますが、まずは従業員にしっかりと利益を還元し、そして顧客や取引先、地域社会や株主といったステークホルダーにも還元する、つまり社会全体に貢献する公益資本主義的な行動をとることにより、個人が潤い、経済がうまく循環し、結果としてわが国が全体として豊かになると考えます。

 これらのことは、理論ばかりの賢い頭では実行できません。まず現場を熟知し、俯瞰的に物事を見ることで全体を把握すること、そしてまず自分自身の頭でしっかり考えて答えを導き出していくこと、そのような「現場主義」に立つことが重要であると考えます。

 

 さて、昨年は1902(明治35)年設置の官立神戸高等商業学校を起点とする母校神戸大学が創立120周年を迎えた記念すべき年でした。神戸大学の卒業生、在学生ならびにその家族や教職員を含めた国内外の神戸大学関係者の交流、研鑽を図り、世代や地域を越えたコミュニケーションの拡大を目指すとともに、神戸大学の発展、プレゼンスおよびブランド価値の向上を目指すべく神戸大学校友会が設置され、また神戸大学発や地域発のスタートアップの創出・育成を行うアントレプレナーシップセンターと起業部の設置、SDGs推進室の設置、産官学連携に向けた動きの加速といった、次世代へ向けた施策にも積極的に取り組まれています。

 これまで神戸大学は「学理と実際の調和」を理念とし、社会で活躍する多くの人材を輩出してきましたが、これからも時代の変遷に即した変革を推し進めることにより、新たな価値を創造し続けていかれることと期待しています。

 凌霜会につきましても、学生支援委員会、ネットワーク構築委員会、情報発信委員会といった各種委員会を新たに設置し、同窓会の活性化に取り組むとともに、昨年は全学支部として奈良県支部を設立、本年には凌霜会播磨支部の設立を予定するなど、凌霜会が社団法人として設立されてから100周年を迎える2024年へ向け、規模、質ともに更なる拡充を目指しているところです。

 

 2023年の干支は癸卯(みずのとう)です。「癸」は十干の最後にあたることから物事の終わりと始まりを意味するとされ、「卯」はうさぎのように跳ねあがることから、何かを始めるのに縁起が良く、好転を表すとされています。このような意味を考えますと、2023年は、新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻といった非常に不安定な数年間から脱却し、これまでの努力が実を結び、勢い良く成長し飛躍する年になることが期待されるのではないでしょうか。

 最後になりましたが、凌霜会諸兄姉の皆様には日頃から、会員の増強、寄附金など多岐にわたるお願いをいたしておりますが、今後とも、凌霜生としての誇りと絆を繋ぐよりどころとしての当会活動を何とぞご支援賜りますとともに、我々も凌霜会の目的である「会員相互の研鑽と親睦」そして「母校支援」を胸に、共に母校のより一層の発展に向け努力してまいりたいと存じます。

 本年が皆様方にとって素晴らしい年となりますことを心より祈念申しあげ、新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。