凌霜第428号 2021年01月12日

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凌霜四二八号目次

 

表紙絵 昭34営 有 岡 幹 雄

カット 昭34経 松 村 琭 郎

 

◆年頭にあたって   大 坪   清

目 次

◆母校通信   品 田   裕

◆六甲台だより   行澤一人、鈴木 純、清水泰洋、四本健二、家森信善

◆表紙のことば 牡丹の花   有 岡 幹 雄

◆本部事務局だより   一般社団法人凌霜会事務局

 第9回定時総会/臨時書面理事会/

 第2回支部代表者会議開催/令和2年秋の叙勲受章者

◆(公財)六甲台後援会だより(63) (公財)神戸大学六甲台後援会事務局

◆大学文書史料室から(37)   野 邑 理栄子

◆学園の窓

 奔流の時代を生きる〜研究科長就任にあたって〜   松 林 洋 一

 コロナ中のアメリカでの研究生活   馬     岩

 刑法の条文に立法当時の日本を感じる   東 條 明 徳

 当たり前なこと   斉 藤 善 久

◆六甲余滴 明治に学び「神戸阿利襪園」の復活をめざす!   中 村 直 彦

◆わたしと地霊   白 羽 三 雄

◆六甲台ゼミ紹介 経営学部・三矢 裕ゼミ   蔵 満 奈央佳

◆六甲台就職相談センターNOW アフターコロナの「ニューノーマル就活」   浅 田 恭 正

◆学生の活動から ライフル射撃サークルの挑戦   吉 川 峻一朗

◆本と凌霜人 『移動と生存―国境を越える人々の政治学―』   佐々木 一 徳

◆クラス大会 珊瑚会

◆クラス会 しんざん会、さんさん会、イレブン会、

      むしの会、双六会、神戸六七会

◆支部通信 京滋、大阪、神戸

◆つどい 美術部凌美会OB会、二水会(バレーボール部OB会)、

     緑蔭クラブ(ソフトテニス部OB・OG会)、

     大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、大阪凌霜俳句会、

     凌霜川柳クラブ、神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 名古屋凌霜ゴルフ会、芦屋凌霜KUC会、花屋敷KUC会

◆追悼 田上量一さん(学23回)を偲ぶ   宇仁菅 良 司

    中野富正君(昭30経)   水 野   洋

◆物故会員

◆国内支部連絡先

◆編集後記   行 澤 一 人

◆投稿規定

年頭にあたって

一般社団法人凌霜会理事長 大  坪     清

(レンゴー㈱会長兼CEO)

 

 凌霜会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。各地で穏やかに、そして健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申しあげます。

 凌霜会は1924(大正13)年9月に設立され、今年で97年目を迎えます。大正、昭和、平成、そして令和の4つの時代にわたり、諸先輩方が築き上げてこられた凌霜の歴史を守っていくとともに、次代を担う若い凌霜の皆様へ歴史と伝統を引き継いでいけるよう、決意を新たに会の運営に全力を尽くす所存です。皆様方には、これまで以上のご支援ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

 昨年を振り返りますと、年初より世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るい、いまだ収束への道筋が見えない状況が続いています。罹患された方々へお見舞い申しあげますとともに、感染拡大防止、収束に向けて尽力されている方々に対し、心より感謝申しあげます。

 神戸大学においても、感染拡大防止の観点から、卒業式、入学式をはじめとした行事が軒並み中止となりました。凌霜会としても、新入生向けの行事を開催することができず、学生との交流の場がなくなるという事態となりました。また15回目を迎えるはずであった神戸大学ホームカミングデイも中止せざるを得ない状態となり、一卒業生としても、凌霜会理事長としても、非常に残念な思いです。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界は様変わりしました。人々の移動が制限され、国境を越えての移動はもちろんのこと、都市によっては外出禁止令が出されるまでに至りました。日本国内においても、経済活動が停滞し、業種や業態によっては経済的に非常に困窮した状況に陥る事態となりました。また1964年以来の日本開催となる東京オリンピックも1年延期となったほか、様々なイベントが中止を余儀なくされており、その経済損失は非常に大きなものとなっています。

 ウイルスの研究が進み、感染防止対策も確立されてきてはいますが、人間としての基本的な行動である、人と会い、意見を交わすことそのものが感染リスクとなるところが、このウイルスへの対応を非常に難しいものとしています。

 世界では、新規感染者数はまだ非常に多い状態が続いており、日本においても、感染拡大を抑えつつ経済活動を回復させなければならないという、難しいかじ取りが求められています。予防効果が高いワクチンの開発も進んでいるという明るいニュースもありますが、現時点で終息を見込める状態にはなく、風邪やインフルエンザと同じように、ウィズコロナを前提としていかざるを得ない状況となっています。国、経済界、そして国民一人ひとりが、新常態(ニューノーマル)を作り上げていくためにはどうしたらよいのか、真剣に考えていく必要があります。

 現在は、インターネットの発展、普及により、世界中どこにいようともコミュニケーションをとることが可能となっています。皆さんも、出社することなく様々な場所でリモートワークを行ったり、オンラインで会議を開催したりということが日常的なものになっていることでしょう。感染拡大防止という点では非常に効果的であり、また、場所の制約を受けることなく、移動にかかる時間も節約できるという利点もあります。

 オンラインのほうが効率的ではないか、これからもこのままでよいではないか、という風潮になりつつありますが、私は、物事の真理は「現場」にあると考えています。自分自身の目で見、耳で聞き、顔と顔とをつきあわせて議論することに勝るものはありません。

 日本ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)が遅れているといわれ、コロナ禍のなかで様々な課題が浮き彫りとなりましたが、一方ではそのコロナ禍を契機として、DXの進展が加速しています。DXの進展そのものは望ましいことですが、サイバーの世界だけがどんどん進んでしまうことは望ましいことではないと考えます。

 IT技術の進展は、我々の生活に大きな恩恵をもたらしています。パソコンやスマートフォンを使えば、指先ひとつで世界中のあらゆる情報を得ることが可能となっています。そのこと自体は素晴らしいことですが、問題なのは、人々がそれで物事を理解したような錯覚に陥り、自分で考えなくなってしまうことです。便利に使いこなしているように見えますが、実はサイバーの世界に頼り切っているだけなのです。

 私は、まずは自分の頭で考える癖をつけることが最も大切であると考えています。どんなに技術が進もうとも、それを使いこなすのは人間の頭脳に他なりません。自分自身の頭で考え、自分なりの答えを導き出すことが重要なのです。そして、議論を交わし、他人の考えも聞きながら自分なりの答えを見つけていく、その繰り返しによって真の考える力がついていく、即ち単に賢いだけではなく強い頭となっていくのです。

 これから5GやAI(Artificial Intelligence)といった技術がより一層身近なものとなってきますが、それに頼り切っていては、人間の考える力がどんどん失われて行ってしまうのではないかと危惧します。

 そのような時代であるからこそ、大学を中心とした高等教育において、自分で考える力を高めていく重要性はより一層高まっていると考えます。「学理と実際の調和」を理念とする神戸大学の存在意義も、非常に大きいといえるでしょう。

 世界に目を向けますと、ポピュリズム、保護主義的な考え方の台頭に加え、低所得者層の新型コロナ感染拡大で顕在化した格差やそれに伴う社会分断、自由や人権に対する不安など、混沌とした状態が続いています。

 世界中の注目を集めた米国大統領選では、バイデン元副大統領がトランプ大統領に勝利し、4年ぶりに民主党が政権を担うことになりました。トランプ政権では、発足当初より米国第一主義を前面に押し出し、中国に対する関税引き上げをはじめとした通商、移民や環境に関する政策等が、自国内のみならず世界的な分断を招く一因となりました。米国が世界のリーダーである時代は終わったのかもしれませんが、バイデン新大統領がリーダーシップを発揮し、分断を修復し世界を協調に導く役割を果たすことを期待しています。

 わが国でも、昨年9月に新たに菅内閣が誕生しました。2012年12月の第二次安倍内閣発足以降、憲政史上最長の連続在日日数である2,822日にわたり安倍首相を内閣官房長官として支えてきた実績もあり、足元では新型コロナウイルス感染拡大への対応と経済回復の両立という大きな課題が立ちはだかっていますが、堅実かつ安定した政権運営を行ってくれるものと確信しています。

 さて、母校神戸大学では、「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」のビジョンを掲げ、さまざまな取り組みが進められています。昨年4月には、価値をキーワードに、分野横断的な研究、教育、社会貢献のプラットフォームを実現する神戸大学バリュースクールが設置されました。そして今年4月には神戸商船大学をルーツとする海事科学部を発展的に改組し、海洋政策科学部が設置されます。

 また昨年2月には、SDGs推進室を設置し、SDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールへの取組みをスタートさせています。2030年に向けた国際目標であるSDGsの達成へ向け全学の広い分野においての取組みを推進し、国内外に発信していくことが期待されます。

 2021年の干支は辛丑(かのとうし)です。「辛」は植物が枯れて新しい世代が生まれようとする状態を表し、「丑」は芽が種子の中に生じてまだ伸びることができない状態を表すとされています。新たな生命が萌し始める状態であり、全く新しいことに挑戦するのに適した年だといえるのではないでしょうか。

 必ずや新型コロナウイルス感染症の収束へ向けた取り組みが奏功し、関西においては2025年の関西・大阪万博に向けての飛躍の一年になることを願っています。

 最後になりましたが、凌霜会諸兄姉の皆様には日頃から、会員の増強、寄付金など多岐にわたるお願いをいたしておりますが、今後とも、凌霜生としての誇りと絆を繋ぐよりどころとしての当会活動を何とぞご支援賜りますとともに、我々も凌霜会の目的である「会員相互の研鑽と親睦」そして「母校支援」を胸に、共に母校のより一層の発展に向け努力してまいりたいと存じます。

 本年が皆様方にとって素晴らしい年となりますことを心より祈念申しあげ、新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。