凌霜第424号 2020年01月10日

表紙絵_秋の白樺林_赤城山.jpg

凌霜四二四号目次

 

表紙絵 昭34営 岩 根 嗣 郎

カット 昭34経 松 村 琭 郎

 

◆年頭にあたって   大 坪   清

目 次

◆母校通信   品 田   裕

◆六甲台だより   行 澤 一 人

◆本部事務局だより   一般社団法人凌霜会事務局

 第1回支部代表者会議開催/ご芳志寄附のお願い/

 事務局への寄附者ご芳名(前号以降10月末現在)

◆【代議員選挙のお知らせ】

◆(公財)六甲台後援会だより(59)  (公財)神戸大学六甲台後援会事務局

◆表紙のことば 秋の白樺林(赤城山)―赤城山雑感―            岩 根 嗣 郎

◆大学文書史料室から(33)   野 邑 理栄子

◆学園の窓

 将棋の世界と研究の世界   清 水   崇

 研究と実務の狭間で   本 田 悠 介

 学問的「越境」の面白さ   竹 内 真 理

 Frugal innovationの重要性―Home Energy Management System(HEMS)を例に   森 村 文 一

◆本と凌霜人 『評伝 西山弥太郎―天皇と呼ばれた男―』   大 住 敏 之

◆六甲台ゼミ紹介 経済学部・岩壷ゼミ   久木原 嵩 彬

◆六甲台就職相談センターNOW 就職活動体験記   浅 田 恭 正

◆クラス大会 凌霜27回

◆クラス会 しんざん会、さんさん会、三四会、イレブン会、

      むしの会、神戸六七会、一八会、互礼会、二四会

◆支部通信 東京、京滋、大阪、神戸、鳥取県、デトロイト

◆つどい 幸ゼミ、喜楽会、男声合唱団グリークラブ、宝生会、

     神大クラブ、丸紅株式会社凌霜会、水霜談話会、

     大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、大阪凌霜俳句会、

     凌霜川柳クラブ、神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 凌霜霞会、名古屋凌霜会、芦屋凌霜KUC会、

      廣野如水凌霜会、能勢神友会、垂水凌霜会、

      花屋敷KUC会

◆追悼 畏友、岡佑光君(昭31法)を悼む   山 代 義 雄

    加藤誠一郎君(昭38経)を悼む   津 森 信 也

◆物故会員

◆国内支部連絡先

◆編集後記   行 澤 一 人

◆投稿規定

年頭にあたって

一般社団法人凌霜会理事長 大  坪     清

(レンゴー㈱会長兼社長)

 

 凌霜会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。各地で穏やかに、そして健やかに新年を迎えられたことと心からお慶び申しあげます。

 凌霜会は1924(大正13)年9月に設立され、今年で96年目を迎えます。大正、昭和、平成、そして令和の4つの時代にわたり、諸先輩方が築き上げてこられた凌霜の歴史を再認識し、そして次代を担う若い凌霜の皆様に歴史と伝統を引き継いでいけるよう、決意を新たに会の運営に全力を尽くす所存です。皆様方には、これまで以上のご支援ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

 昨年5月1日、令和の時代が幕を開けました。平成の時代は昭和天皇が崩御された悲しみの中で始まりましたが、明治以降の憲政史上初めて、そして1817年に仁孝天皇へ譲位された光格天皇以来202年ぶりとなる譲位に伴う改元となった令和の始まりは、皇太子徳仁親王殿下が天皇に即位される喜びに包まれたものでありました。

 今年は、神武天皇が即位された紀元前660年を元年とする皇紀では2680年にあたります。この長きにわたり綿々と続いてきた我が国の歴史に思いをはせるとともに、一人ひとりが我が国の発展のために努力し、若い世代へより良い日本をバトンタッチしていく責任を感じる、そのようなことが未来にわたって繁栄していく日本を作る礎となるのではないでしょうか。

 このような晴れやかな思いで始まった令和ですが、一方では昨年は自然災害が多発した年でもありました。なかでも9月に千葉県を中心に甚大な被害をもたらした台風15号、その被害から復旧する間もなく再び関東および東北地方で猛威を振るった台風19号においては、尊い命が失われ、数多くの被災者の方々が不自由な生活を余儀なくされることとなりました。被害にあわれた方々に対し、心よりお見舞いを申しあげます。

 このような災害が起こるたび、自然の力の前では何と人間が無力な存在であるかを思い知らされます。しかし特に2011年の東日本大震災以降防災意識は高まっており、自然災害の発生を防ぐことはできなくとも、国、地方自治体、企業や個人レベルにおける、生命や財産を守るための取り組みは着実に進んでいることを実感しています。

 先日、広島県江田島市にある旧海軍兵学校(現、海上自衛隊第1術科学校)を訪問する機会がありました。アメリカのメリーランド州アナポリスにある合衆国海軍兵学校、イギリスのデヴォン州ダートマスにある王立海軍兵学校とならび世界三大士官学校の一つに数えられ、多くの優秀な士官を卒業生として輩出した兵学校なのですが、そこで用いられていた「五省(ごせい)」という訓戒があります。

()(せい)(もと)るなかりしか(誠実さや真心、人の道に背くところはなかったか)」

「言行に恥づるなかりしか(発言や行動に、過ちや反省するところはなかったか)」

「気力に()くるなかりしか(物事を成し遂げようとする精神力は、十分であったか)」

「努力に(うら)みなかりしか(目的を達成するために、惜しみなく努力したか)」

「不精に亘るなかりしか(怠けたり、面倒くさがったりしたことはなかったか)」

 毎日消灯前にこの五つの訓戒を問いかけ、一日の行動を自省自戒したそうです。

 この「五省」は、現代に生きる我々にとっても非常に大きな意味を持つ言葉です。自分の言動を振り返り、反省や後悔を明日の糧として日々向上心を持って励んでいくことが、人間として成長していくうえで大切なことだと考えます。

 また、資料館の正面に山本五十六が揮毫したといわれる「凌雲気」が掛かっていました。「凌霜」は霜雪に耐え抜く気力のことですが、「凌雲」は更に強く雲を越えていく気力と勇気のことで、凌霜会もこの「凌雲」の気力と勇気を持ちたいものです。

 近年は、AI、IoT、ロボタイズといったIT技術によって我々の生活は大きく変貌していくことが予想されますが、どんなに技術が進んでも、それを使いこなすのは人間の頭脳であることを忘れてはいけません。逆に言えば、使いこなすだけの頭脳と気力と勇気を持たなければならない、ということになります。これはIT技術に関する専門的な、高度な知識を習得すれば良いということではありません。まず自分自身の頭でしっかりと考える、地に足の着いた考え方を身につける、ということが重要です。導き出した答えが他者からみれば偏見と映ることもあるでしょうが、そこで多くの人と議論し、意見に耳を傾け、必要に応じて軌道修正していくことによって、本当の力として身についていくものです。

 その点では、大学を中心とした高等教育の重要性はより一層高まっているといえますし、「学理と実際の調和」を理念とし、社会科学系をルーツとする神戸大学の存在意義は大きいといえるでしょう。

 世界に目を向けますと、ポピュリズム、保護主義的な考え方の台頭により、混沌とした状態が続いています。なかでも長期化する米中貿易戦争の影響があらゆる国々において顕在化しており、地政学的緊張の高まりも相まって、世界経済は各国で同時減速の状況となっています。

 英国のEU離脱問題(BREXIT)についても、今年1月末までの離脱延期が確定しましたが先行きは見通せず、英国経済のみならず世界経済に与える影響も懸念されるところです。

 我が国の隣国である韓国、北朝鮮との関係においても、貿易や国防の面で多くの問題を抱えていますし、加えて中国、ロシア、韓国との間には領土問題、北朝鮮との間には拉致問題という我が国の主権にかかわる問題が横たわっており、いずれも解決のためには継続的かつ地道な交渉により一歩ずつ前進させていくしかないものです。

 このような情勢のなか、現在の安倍内閣は非常に安定的な政権運営を行っており、安倍首相の在職日数は昨年11月には桂太郎氏を抜き憲政史上最長となりました。外交面においては米国のトランプ大統領をはじめとした主要国首脳と友好的な関係を築いており、安定した長期政権を背景に、世界の政治・経済においてキーパーソンとして重要な役割を担っています。

 国内においては、昨年10月の消費税率の引上げや自然災害による被害の影響等、経済動向において注視しなければならないリスク要因はありますが、一方で堅調なインバウンドによる需要喚起も期待され、引き続き安倍首相の強固なリーダーシップのもと、盤石な経済成長を成し遂げることを期待しています。

 さて、母校神戸大学では、「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」のビジョンを掲げ、さまざまな取り組みが進められています。なかでも、この4月には神戸大学バリュースクールが設置されます。世界で初めて価値創造教育を体系化したもので、ここでは問題解決型思考、アントレプレナーシップを持つ、革新的イノベーション人材の育成を目指しています。この取組みは、SDGs(持続可能な開発目標)の実現にも資するものであり、豊かで活力のある未来につながるものであると確信しています。

 2020年の干支は庚子(かのえね)です。「庚」は植物の生長が止まって新たな形に変化しようとする状態を表し、「子」は新しい生命が種子の中に萌し始める状態を表すとされています。子年は十二支の一番目、新たなスタートを切る年です。株式相場には「子は繁栄」という言葉があり、株価が上昇する年になるといわれています。

 昨年のラグビーワールドカップでは、日本代表が史上初のベスト8と輝かしい成果を収め、開催前の予想を上回る盛り上がりとなったことに加え、世界中から訪れた観客やメディアから、日本に根差したおもてなしの精神、治安の良さが高い評価を得ました。その良い流れは、今年開催される東京オリンピック・パラリンピックにつながり、大きな経済効果を招くことでしょう。

 2021年には関西一円を会場とするワールドマスターズゲームズが、そして2025年には大阪・夢洲において万国博覧会が開催されます。近い将来、2020年が日本経済の起爆剤となる年であったと記憶されることを願ってやみません。

 最後になりましたが、凌霜会諸兄姉の皆様には日頃から、会員の増強、寄付金など多岐にわたるお願いをいたしておりますが、今後とも、凌霜生としての誇りと絆を繋ぐよりどころとしての当会活動を何とぞご支援賜りますとともに、我々も凌霜会の目的である「会員相互の研鑽と親睦」そして「母校支援」を胸に、共に母校のより一層の発展に向け努力してまいりたいと存じます。

 本年が皆様方にとって素晴らしい年となりますことを心より祈念申しあげ、新年にあたってのご挨拶とさせていただきます。