凌霜第415号 2017年10月13日

表紙415.jpg  凌霜四一五号  目 次

◆母校通信                  藤 田 誠 一 

◆六甲台だより             行  澤 一 人 

◆本部事務局だより  一般社団法人 凌霜会事務局 

通常理事会で平成28年度事業報告及び決算書類など承認/第6回 定時総会/
WEB会員名簿掲載基準変更のお知らせ/口座自動引 き落とし、終身会費など
便利な会費支払い方法のお知らせ/メールマガジン、ツイッターをご覧ください/
ご芳志寄附のお願い/事務局への寄附者ご芳名一般社団法人凌霜会決算書

◆新入会員/新入準会員 

◆第10回(平成29年度)社会科学特別奨励賞(凌霜賞)受賞者

◆(公財)六甲台後援会だより(50) (公財)神戸大学六甲台後援会事務局 

◆表紙のことば 高原をゆく   松 村 琭 郎 

◆大学文書史料室から(24)   野 邑 理栄子 

◆凌霜俳壇  古典和歌

◆学園の窓  複雑性または重層構造について    三 品 和 広 

       大学の予算配分制度について     神 谷 和 也 

       近況報告              安 井 大 真 

       英米法の世界            板 持 研 吾 

◆六甲台ゼミ紹介  経済学部・金京ゼミ      中   慎太郎 

◆学生の活動から 平成29年度第38回神戸大学六甲祭開催のお知らせ    
                          中 井 美 月 

◆六甲台就職相談センター NOW  「素の自分を磨く」 絹 田 清 昭 

◆大阪凌霜俳句会が神戸大学基金へ寄附       郷 原 資 亮 

◆凌港会は解散します 前 田 芳 一 

◆本と凌霜人 「神戸高商と神戸商大の会計学徒たち」 辻 川 尚 起 

◆随想ひろば 「ご縁の国しまね」に暮らして     大 下 弘 之 

        愚者も他人の経験から学ぶか     卯 野 秀 和 

◆クラス会 互志会、しんざん会、神五会、さんさん会、三四会、
      珊瑚会、山麓会、イレブン会、むしの会、神戸67会、
      教養11クラス会...43年入学、よつば会、互礼会、61会

◆支部通信 東京、浜松、京滋、大阪、神戸、姫路、デトロイト 

◆つどい  喜楽会、則武ゼミ、ホッケー部OB会、凌霜謡会(観世流)、
      宝生会、シオノギOB凌霜会、ダイキン凌霜会、神戸凌港会、
      水霜談話会、大阪凌霜短歌会、東京凌霜俳句会、大阪凌霜俳句会、
      凌霜川柳クラブ、神戸大学ニュースネット委員会OB会

◆ゴルフ会 芦屋凌霜KUC会、廣野如水凌霜会、能勢神友会、垂水凌霜会、 
      花屋敷KUC会物故会員   99国内支部連絡先 

◆編集後記   行 澤 一 人 

◆投稿規定   

〈巻頭エッセー〉
『第3期中期目標・中期計画における教育改革と
    数理・データサイエンスセンター(仮称)の設置』

    副学長(共通教育・数理データサイエンス担当、国際教養教育院長)
                        齋  藤  政  彦 

 2017年4月から、現職を務めております。
 神戸大学においては、2015年4月に武田廣学長が就任して以来、新しい神戸大学長期ビジョン(武田ビジョン)「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学」の策定が行われ、第3期(平成28〜33年度)の中期目標・中期計画の策定に向けて、大学の機能強化の面から様々な取り組みが行われてきました。
 教育関係においては、2015(平成27)年4月に大学教育推進機構の改組を行い、大学教育推進本部、国際教養教育院、国際コミュニケーションセンター、大学教育研究推進室を設置しました。この組織改革の後、2016(平成28)年から教育改革を進めており、クォーター制の導入、新しい教養教育と神戸スタンダードの導入などを進めてきました。また神戸大学の先端研究と、事業創造に焦点を当てたアントレプレナーシップとの融合による文理融合型の独立大学院である「科学技術イノベーション研究科」を設置しました。平成29年度には発達科学部と国際文化学部を統合し、すべての学生が海外研修とフィールド学修に参加するグローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)などにより、「協働型グローバル人材」の育成を目指す国際人間科学部の設置を行いました。また、後述しますが、世界的な第4次産業革命(情報産業革命)の中で、将来の我が国の基盤を支える人材育成のために、全学の数理・データサイエンス教育研究を推進し、産業界や地域との連携を目指す数理・データサイエンスセンターを平成29年度後期に設置する予定です。
 これらの改革の背景を少し思い出してみます。第3期を迎える前の数年の間、各国立大学は、様々な機能強化策を打ち出し、文科省はその強化策を競い合わせて評価し、改革補助金という予算で差をつける方向性を打ち出しました。さらに、第3期の初年度にあたる平成28年度には、各国立大学の機能強化の方向性に応じた取り組みに対して、3つの枠組みの中で重点支援し、運営費交付金に反映させる方針を打ち出しました。神戸大学は、全学的に卓越した教育研究、社会実装を推進する国立大学の枠組みである重点支援③を選択し、旧帝大系を含む16校とともに評価を受ける事になりました。平成28年度には、神戸大学の改革の方向性は高く評価され16大学の中でトップの3大学となった事は記憶に新しい所です。
 しかし、忘れてはならない事は、運営費交付金は全体として減らされており、神戸大学でも、平成16年の法人化以降15%程度、金額にして30億円くらいの運営費交付金が減らされています。実際、平成16年度の運営費交付金は、約229億円でしたが、平成28年度は201億円となっています。神戸大学の構成員の努力により、病院収入、科学研究費や受託研究等の外部資金も増えてはいますが、神戸大学の基本的な教育と研究を支える財政が非常に苦しくなっている事は日々感じざるをえません。
 さて、この様な中で、神戸大学は第3期の中期目標・中期計画で、その伝統と特色を生かし、どのように教育研究の目標を立て、そしてそれをどの様に実現していくかが問われています。神戸大学の第3期中期目標・中期計画は大学のHP等で見ていただく事にして、将来の見通しについて簡単に現在検討している方向性を述べます。

1.教養教育においては、全学部生が卒業までに身に付ける「神戸スタンダード」を明示しました。 

2.主に3・4年生を対象とし、専門の異なる学生が共通の課題について協働して解決方法を探り「分野融合」「文理融合」を体現する「高度教養科目」を設置し、卒業までに4単位の取得を必修としました。

3.学生の海外派遣などの為にギャップタームの設定などの必要性から、全学的な2学期クォーター制を平成28年度から導入しました。

4.平成30年度に向けて、さらなる教育改革を計画しています。キーワードは「未来社会を牽引するイノベーション創出型リーダーの育成」です。すでに導入している「初年次セミナー」に加えて、社会の第1線で活躍されている神戸大学OB・OGの講義を新入生が聴く「志プログラム」など、学ぶモチベーションの醸成を考えています。また、教育の国際通用性の強化、そして未来志向の教養教育として、神戸スタンダードに、高度言語リテラシーと数理・データリテラシーに基づく課題解決力を加えた「神戸スタンダード+」を制定します。

5.「高度教養セミナー」の発展形として、企業や自治体と共同で、問題解決のためのアクティブラーニングを行う「オープンイノベーションワークショップ」を展開し、分野、学部を超えた学びを実現します。

6.教育におけるICT化を進め、学生の教育環境の充実を図ります。

 さて最後になりましたが、私が担当している数理・データサイエンスセンターについて述べます。2016年4月19日の産業競争力会議において、文部科学大臣が一枚のポンチ絵を発表しました。それは、「第4次産業革命に向けた人材育成総合イニシアチブ(未来社会を創造するAI、IoT、ビッグデータ等を牽引する人材育成総合プログラム)」というものでした。平成29年度の政策課題の概算要求においては、国内で10の大学を数理・データサイエンス教育の拠点と定めて、標準カリキュラムの作成をするというスキームが提案され、神戸大学も拠点への申請をするとともに、組織要求で、数理・データサイエンス教育センターの設置を予算要求させていただきました。残念ながら、平成29年度に選ばれた6拠点の中には入れなかったのですが、組織要求の方で、1名の人員要求が認められて、平成29年度中にセンターの設置を準備しています。
 平成30年度においては、残り4つの拠点大学が選定されるとの事であり、地域性を考えるとすでに3つの拠点大学(京大、阪大、滋賀大)が選定されている関西地区は難しい様ですが、再びエントリーしました。センターの名前は、数理・データサイエンスセンターとし、全学教育部門、研究部門、連携部門の3つの部門を作り、特に研究部門には、自然科学系の人工知能やデータ解析だけでなく、人文系、社会科学系、生命医学系の研究者を巻き込んで全学の研究者に協力していただく体制としました。データに関わる学問分野は広く、医療ビッグデータ、金融、個人情報保護法、マーケティング、画像認識、音声認識、自然言語処理、自動運転、低電力半導体などあらゆる分野に関わり、まさに文理融合で部局間の垣根が低い神戸大学の特色が生かせるものと思っています。
 全学教育部門では、数学、統計学、プログラミング、データサイエンス入門と概論というデータサイエンス科目を設定し、標準カリキュラムを構成しました。学外からは、機械学習の日本における第一人者であるNTTCS研、理研AIPの上田先生、産業技術総合研究所の本村先生、NEC中央研の森永先生などにもご協力いただく予定です。
 平成30年度から、学部生は指定された科目の単位を取得する事により、データサイエンス標準カリキュラムレベル1のコースを修了した事となり、認定書が与えられます。さらに興味のある学生は高いレベルを設定し、企業等とのオープンイノベーションワークショップなどにより、課題解決型DSアドバンストコース、価値創造DSアドバンストコースも設置し、全体として「神戸大学データイノベーションプログラム」として教育プログラムを開発します。 連携部門では、関西・神戸地区の企業や、様々な企業からのデータ活用、データ分析のニーズ調査を行い、学内の様々な研究者の知見を活用して問題解決する仕組みを構築する事を計画しており、いくつかの企業とすでに連携を検討しています。関西経済連合会には、京大・阪大・神戸大の3大学学長会議との連携を活かし、関連企業との橋渡し等でご協力いただく予定です。また、シンガポールの南洋理工大学と平成28年12月1日に、大学間協定を締結しデータサイエンスに関する教育研究の連携も進める予定です。 まさに、数理・データサイエンスセンターは、神戸大学における文理融合の教育研究の基盤となり、また関西・神戸地区の企業や自治体、また凌霜会会員をはじめとする、同窓生の皆様との連携を通じて、神戸大学のデータイノベーションによる価値創造の基盤を構築したいと思っております。

 今後とも、凌霜会会員の皆様には、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。