凌霜第400記念号 2014年02月01日

ryoso400.jpg凌霜四〇〇記念号目次

 

◆理事長からのメッセージ(17)        高 﨑 正 弘

◆学長からのメッセージ            福 田 秀 樹

目 次

◆母校通信                  正 司 健 一

◆六甲台だより                鈴 木 一 水

◆本部事務局だより         一般社団法人凌霜会事務局

◆(公財)六甲台後援会だより(35)

                (公財)神戸大学六甲台後援会事務局

◆第400号特集

 水島銕也先生 ―生誕百五十周年に想う―   新 野 幸次郎

 わが国の経営機械化を拓いた巨人 平井泰太郎 北 村 新 三

 凌霜の再刊に際して

 母校の新制大學問題に關する田中學長の説明槪要

 震災日誌から                             堀  ろく 郎

◆学園の窓

 グローバル化を進める経済学研究科      吉 井 昌 彦

 経営学研究科・経営学部の過去25年の変遷、現状と課題

                              水 谷 文 俊

 法学部・法学研究科の過去・現在・未来    品 田   裕

 国際協力研究科の変遷と課題         土 佐 弘 之

 経済経営研究所の歴史と伝統         浜 口 伸 明

◆凌霜俳壇  凌霜歌壇

◆大学文書史料室から(9)          野 邑 理栄子

◆幻の壁画「海ゆかば」蘇る          石 井 義 章

◆若かりし日の西独セールス出張        白 羽 三 雄

◆ノスタルジー六甲台             都   良 世

◆学生の活動から

 第34回六甲祭を終えて            花 田 律 子

 私を変えた夏~海外インターンシップを通して~ 佐 藤 誠 子

 神戸大学体育会硬式野球部の紹介        山 本 貴 彦

 神戸大学文化総部交響楽団の紹介        有 吉 周 平

 神戸大学体育会サッカー部の紹介        中 村 俊 哉

◆六甲台就職情報センター NOW 就活ルール変更に思う

                               竹 内 雅 弘

◆リレー・随想ひろば

 雲 の 澪                  長 澤 健 夫

 阪神淡路大震災体験を語り伝える        千 田 徹 夫

 少し懐かしい思い出              藤 井 義 夫

 私が考える資産運用の必要性について      安 達 剛 之

 社会人として、本学経営学研究科での学びを活かして

石 川 裕 章

◆編集後記                   鈴 木 一 水

<抜粋記事>

◆理事長からのメッセージ(17)

                     一般社団法人凌霜会理事長

           公益財団法人神戸大学六甲台後援会理事長

                              高 﨑 正 弘

 この冬は厳しい寒波が続くとの長期予報のなかで年が改まりましたが、会員の皆さまにはお健やかに新しい年をお迎えになったことと存じます。

 ご挨拶が遅くなりましたが本年もよろしくお願い申し上げます。

 ところで昨年10月23日、内閣総理大臣より、当法人の公益目的財産の公益財団法人神戸大学六甲台後援会への寄附完了の確認書を受領し、凌霜会の一般社団法人への移行に係る全ての法的手続きが完了しました。平成20年の春、兵庫県庁担当部局に相談を始めてから5年半の月日が経っていますが、今思い返すとあっという間の移行作業期間でした。多くの類似法人が専門家の手を借りて対応したのに対し、凌霜会は、会員諸兄姉、対応委員会メンバーはじめ事務局の皆さんの手作りによる移行作業で、多くのことを経験し、また学ぶことができました。一方で、昨年は、今回の寄附によって手薄になった剰余金を少しでも回復すべく、ご芳志へのご協力、終身会員への移行のお願い等をスタートさせました。今年も引き続きこの活動を継続して参りたいと思っておりますので、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

 昨年は母校に於いても、「研究大学」の指定獲得、日欧連携教育府の設置など多くの話題がありましたが、暮れの12月6日には、公益社団法人経済同友会副代表幹事で教育改革委員会の北山委員長(三井住友銀行会長)ほかメンバー約20名が初めて神戸大学を訪問され、「グローバル教育」の実状等について先生方との意見交換が行われました。本件は、凌霜会の動きがきっかけとなって実現したもので、これを契機に、母校と中央経済界との連携が強まり、今後の多面的な交流を通じて母校の発展の一助になればと願っています。また、昨年度の事業として、会員の皆さまのご好評をいただいている会誌「凌霜」の様式を平成25年2月号から刷新(B5判化とカラーグラビア)したことも忘れるわけには参りません。

 以上のように、多くの思い出と将来に繋がる収穫を残した平成25年でありましたが、今年も一休みすることなく山積する課題に挑戦していかなければならないと考えています。思いつくままに今年の凌霜会の課題を列挙すると以下のようなものがあります。

①代議員・理事の改選

  新法人スタート時の代議員・理事が任期を迎え改選の年に当たります。既に候補者選考委員会や選挙管理委員会が活動を開始しており、遺漏なきを期して参ります。

②会員の増強

  今年は、準会員制度導入から満10年が経ち、10年分前払期間が終了する最初の年に当たりますので、この方たちの会員資格継続(現在の法律では、一般社団法人の安定した運営を担保するため、会員には会費支払義務を課しています)をはじめ、職域対策、地域支部対策等により会員の増強に引き続き注力致します。

③寄附講義の具体化

  六甲台後援会との共催による社会科学系新入生を対象とした寄附講義の具体化に向けて学内関係者との協議を進めて参ります。現在、大学当局では文科省の「国立大学改革プラン」を受けてカリキュラムの見直しを予定しており、これらの動きとの整合性を見極めながら、27年度以降の出来る限り早い時期の実現を目指したいと考えています。この講義を通じて、母校の偉大な先輩諸兄姉の足跡を振り返り、また、社会経験豊富な卒業生による生きた講義により、母校への帰属意識と愛校心の高揚を図り、関係者の更なる一体感の醸成を追求致します。

④六甲台後援会助成事業対象の見直し

  六甲台後援会は昭和32年に設立され、当時の国家予算配分上の旧帝大との間の大きな格差の象徴であった教員の海外派遣(当時の記録によると、社会科学系3学部合わせても年に教員1人しか海外に派遣できないような状況)を助成することを一つの目的としていました。

  この教員の海外派遣費助成の重要性は、今日においても何ら色あせるものではありませんが、大学をめぐる環境も大きく変わってきています。

  限られた財源を有効に活用するため、国の予算も、所謂運営費交付金から個別大学の尖がったプロジェクトに重点がシフトしてきています。

  母校の社会科学系部局府においても、グローバル教育強化の一環として、経済学部5年一貫経済学国際教育プログラム(IFEEK)、経営学部国際ビジネス教育研究プログラム(KIBER)、法学部の国際化の取組み「模擬安保理」「国際模擬商事仲裁」、EUエキスパート人材養成プログラム(ダブルディグリー・プログラム、経済学研究科・法学研究科・国際文化学研究科)といった特色あるプログラムが進められています。

  このような大きなうねりを見据えて、六甲台後援会の助成事業対象も一部プログラム単位にシフトしていく必要があるのではないかと考えています。同後援会の「助成事業選考委員会(中野委員長)」にその検討をすでに依頼し、本年夏までの答申を受けて、27年度には具体化を図りたいと思っています。

⑤水島初代神戸高商校長の生誕150周年記念事業

  水島初代校長の教育姿勢は、先生没後85年を経た今日においてもなお燦然と輝き、我が国教育界に大きな示唆を与えています。詳しくは、新野元学長の本誌別稿「水島銕也先生―生誕百五十周年に想う―」及び会誌398号の附属図書館野邑史料室長補佐による「大学文書史料室から(7)」をご覧いただきたいと思いますが、その水島先生の遺徳を偲び、記念行事を催したいと考えています。

  凌霜会堀顧問、一木事務局長、六甲台後援会の海野事務局長に、現役からはベルカン代表を交え、新野六甲台後援会特別顧問のアドバイスを頂戴しながら早急にその具体的内容を煮詰めることと致します。

  今のところ、たたき台として、[・新野特別顧問による講演または記念冊子の発行・水島先生の故郷で、出光佐三、福沢諭吉の出身地でもある「大分中津」訪問・先生の残された書の収集と保存]などを想定しています。

  出光佐三記念六甲台講堂前庭の胸像に加えて、六甲台本館前の校庭には先生の生誕百年の記念碑が立っています。ホームカミングデイ等の機会に是非ご覧いただき遺徳を偲んでいただければと思います。

 昨年の12月5日、阪神淡路大震災犠牲者鎮魂の記念事業である「第19回神戸ルミナリエ」が開催されました。光の回廊を歩みながら、地元神戸の更なる飛躍を願い、また、来る年が会員の皆さまにとってよき年であることを祈念しつつ、会場を後にしたことをご報告し、新年のご挨拶と致します。

 なお、本号は凌霜誌第400号という記念すべきもので、多くの特別企画を掲載しお届けしています。歴史の重みを感じつつお楽しみいただければ幸いです。

◆学長からのメッセージ

           神戸大学学長 福 田 秀 樹

 『凌霜』誌400号、おめでとうございます。「凌霜会」は大正13年9月設立。会誌『凌霜』はその前の大正13年6月に創刊されました。それ以来、活動を続けられ、本年、凌霜会は設立90周年、会誌も400号に到達しました。深く敬意を表します。この間、多数の凌霜人が産業界、金融界、国際商取引界、法律・会計界、政界、学界など多方面で活躍され、神戸大学の発展に貢献していただいたことに、改めて御礼申し上げます。

 神戸大学は、2012年5月に創立110周年を迎え、さらに発展を続けています。最近のトピックスを記します。

 一つ目は、「研究大学の選定」です。文部科学省は昨年8月「研究大学強化促進事業」の支援対象機関に、神戸大学を含む全国22の大学等を選定しました。10年間にわたって補助金を支給するものです。

 神戸大学は、「文理融合型総合研究大学」として申請しました。本学のように「文理融合」を特徴として採択された大学は例がありません。研究大学としての成果をあげていくため、今後はさらに「文理融合」を基本とした分野横断型の研究を強化し、他大学にはないユニークな研究成果を追求していきます。

 二つ目は、神戸大学が日本代表を務めている「日本・欧州連合間学際的先端教育プログラム」が、日本政府と欧州連合(EU)で実施する教育連携プログラムの一環として採択されたことです。

 日本側は、神戸大学、九州大学、大阪大学、奈良女子大学の4校で国立大学連合を結成、EUの6大学と交流します。2017年までの4年間に、日本から23人を派遣、EUから20人の学生を受け入れます。1年間の留学後、参加学生は、日本とEUの大学からそれぞれマスターの学位を取得することができます。いわゆる「ダブルディグリー」プログラムです。

 この実施に当たって、10月1日、「日欧連携教育府」を設置しました。国際文化、法、経済の学部・研究科を中心として、2014年4月からEUエキスパート人材養成プログラムが開始されます。

 EUとの関わりは社系・文系だけではありません。神戸大学は理系の「日本・EUイノベーション・科学・技術協力強化プロジェクト」に日本から参加する唯一の機関として採択されました。

 以上のように、EUとの戦略関係において、神戸大学は日本の大学の中で中心的役割を演じてきました。神戸大学が、社会科学系部局を中心として、2005年から幹事校としてEUIJ関西の活動を続け、また、ベルギーのブリュッセルに事務所を設置して活動を行ってきた成果なのです。

 三つ目は、「オックスフォード大学からの留学生受け入れ」です。神戸オックスフォード日本学プログラム第一期生として、一昨年10月から、文学部で学んでいた日本学専攻の留学生12名は、素晴らしい成果をあげて7月末に修了しました。二期生もすでに来日しています。

 四つ目は、一昨年4月に設置した「社会科学系教育研究府の進展」です。5月23日には設立一周年記念シンポジウムを開催。8月27日には研究府と法学部の主催で「模擬安全保障理事会」を開催しました。市内の神戸、兵庫、長田高校に参加を呼びかけ、高校生と法学部生、院生などが二人一組となり、常任理事国、非常任理事国役を務めました。元・国連事務次長の明石康神戸大学特別教授にも、ご参加いただき、審査をしていただきました。このような試みを今後も継続します。

 国立大学の教育・研究の成果への期待は高まる一方で、わが国の財政状況が年々厳しくなる中、国立大学はさらなる改革を行うことが求められています。その一環として、東京大学をはじめとする他の有力国立大学でも、大学と同窓会との関係強化が望まれることは言うまでもありません。厳しい環境を神戸大学が切り抜け、神戸大学が教育・研究の両面で世界の大学に並び立つために、神戸大学の教職員は努力を重ねますが、同窓会の皆様が大学と一体となって、神戸大学を支えていただくことで最上の結果が得られると信じています。今後とも皆様方のご指導、ご鞭撻を何卒よろしくお願いします。