凌霜第404号 2015年01月03日

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凌霜四〇四号目次

 ◆年頭に当たって―理事長からのメッセージ(18)―         高﨑正弘

◆母校通信                                  正司健一

◆凌霜俳壇  凌霜歌壇

◆六甲台だより                                鈴木一水

◆本部事務局だより                 一般社団法人凌霜会事務局

会員数の動向/「口座自動引き落とし」「終身会費納入制度」などのお知らせ
/ご芳志寄附のお願い/事務局への寄附者ご芳名

◆表紙のことば 白鳥の挨拶                        森 泰造

◆(公財)六甲台後援会だより(39) (公財)神戸大学六甲台後援会事務局

◆年賀広告

◆学園の窓

 自分の目で見ることについて                         櫻庭涼子

 日本の国際化とM&A                         ラルフ・ベーベンロート

 神戸大学での1年目                           水野倫理

 企業経営と顧客価値を考える                     森村文一

◆大学文書史料室から(13)                      野邑理栄子

◆トップマネジメント講座のご紹介                    馬場新一

◆水島銕也先生生誕150年記念事業

 お孫さんと高﨑実行委員長対談

�実行委員長対談

◆ベトナム・日本学術交流会議2014に関するお礼とご報告   藤田誠一

◆異文化交流における柔道の絆                 金子ガブリエル

◆学生の活動から

 第35回六甲祭を終えて                        相模祐輔

 文化総部邦楽部について                       八木悠夏

◆六甲台就職情報センター NOW

         ―「個人」と「組織」―                  浅田恭正

◆リレー・随想ひろば

 豫科よ何時までも有難う                        福住 實

 不可知論二著を読む                          郷原資亮

 異常気象・エネルギー                         上月秀夫

 会社時代の思い出とこれからの趣味                堀口雅一

 学びの旅                                 釜平雅史

◆編集後記                                 鈴木一水

<抜粋記事>

年頭に当たって―理事長からのメッセージ(18)―

                            一般社団法人凌霜会
                  公益財団法人神戸大学六甲台後援会
                            理事長 高 﨑 正 弘

 凌霜会の皆さま明けましておめでとうございます。会員の皆さまにはお健やかに新しい年をお迎えになったことと存じます。昨年の10月号より会誌の発行が1カ月前倒しとなり、今年から新年早々にご挨拶出来ることとなりました。本年も宜しくお願い申し上げます。

 さて、昨年は、凌霜会並びに神戸大学六甲台後援会に多大なご支援、ご協力を賜り、誠に有難うございました。お蔭さまで、従来からの社会科学系部局への助成、各種会合に加えて、官立神戸高商水島銕也初代校長生誕150年記念事業、凌霜会員のご尽力による外部寄附講義、会誌発行月の変更など、有意義な施策・活動を展開することが出来ました。この内、生誕150年記念事業では、5月の大分中津市、10月の六甲台ホームカミングデイ当日と、2回に亘る新野幸次郎元学長のご講演などを通じて、改めて母校の歴史・伝統に触れ、多くを学ぶと同時に、色々な出会いや再発見がありました。

 水島神戸高商初代校長、田崎神戸商業大学初代学長の寿像、胸像の説明板の整備、水島先生の生誕地大分中津市の新貝市長様や先生のご遺族井上様との出会い、中津の行事で大変お世話になりました高橋様(昭33経)はじめ地域の方々との巡り合い、出光佐三記念六甲台講堂や図書館の中山画伯壁画の意義再発見、ご遺族からの遺品のご寄贈など、凌霜会関係者にとって本当に実り多い年となりました。数多くの遺品は、大学文書史料室の野邑先生のご尽力で整理され、一部はホームカミングデイに合わせて百年記念館に「官立神戸高商物語」として展示され、多くの来場者に楽しんでいただきました。

 今回の記念事業は、思い付きとか懐古趣味でスタートしたものではありません。現代に通ずる「人間教育」「国際人教育」に象徴される水島先生の教育姿勢・ご遺徳を偲ぶ、母校神戸大学のDNAを探す旅であります。その原点に、激動する時代環境を乗り切る明日への道筋を見出そうとするものであります。

 昨年の会誌10月号で、47年経営Ⅱ卒の松熊忍さんは、寄稿文「神戸港の発展が神戸大の歴史・伝統の基盤を築く」のなかで、「神戸港とそれに関連する造船、鉄鋼などの諸工業の発展が、一時は三井、三菱をも凌ぐ取引量を誇った鈴木商店はじめ我が国を代表する企業が神戸に本社や中核支社を置く契機となり、母校の先輩たちがそれらの企業で大活躍された。これらの歴史が意外と学生たちに知られていない。グローバルな社会で活躍する上で一番大事なことは、自信と誇りを持って語れる歴史と伝統、そして心の原風景が有ることではないか。神大生が、伝統と歴史の原点を顧みて己の真髄を高め、今後さらに活躍することを願っている」(筆者要約)と語っておられます。

 また、人間発達環境学研究科長の岡田章宏教授は、会誌「紫陽会」の昨年10月号で、「国立大学の改革」と題して、イギリスの18世紀の政治家の「保守せんがために改革する」という言葉を引用して、「激動の時代のなかで、それぞれの有する特色・伝統を守る為には、その良さがもっと活きる環境を探しだし、さらにそれを創り出していくその作業こそが、過去を未来へと繋ぐ改革なのだと考えている」といった趣旨のことを述べられています。大学改革が叫ばれるなか、我々凌霜会員も当事者の一人として心に留め置きたい言葉であります。

 鉄血宰相と言われたビスマルクの「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と訳されている、有名な言葉があります。「歴史に学び外部の風に鍛える」、これこそが変革期の組織に求められる基本理念であると思っています。今、凌霜会では、これら機会の提供を主たる目的とする、卒業生持ち回りの「寄附講義」の開設に向けて大学当局と協議を進めています。会員のご尽力によるJAPIC(一般社団法人日本プロジェクト産業協議会、会長・三村明夫新日鉄住金㈱相談役名誉会長)の寄附講義など、既に具体化をみたものもあります。外部の風が母校に新風を吹き込み、学生諸君の糧となることは間違いないと信じています。

 今世間では、受身の知識偏重教育から主体的教育充実への変革の必要性が叫ばれており、我々凌霜会会員の間でも、改めて本学の伝統の一つである「ゼミ」の強化に関する議論が広まっています。現役学生の皆さんも、一方通行の知識偏重に安住することなく、「ゼミ」への積極的な参加を通じて考える力を更に磨き、「学生時代にこれだけはやった」というものを是非残して欲しいと思います。それが、皆さんの将来を切り拓く貴重な鍵になると信じます。

 事例が私事で恐縮ですが、卒論のテーマは恩師入江先生の感化を受けて「短期資本移動の交易条件に与える影響について」、参考資料としては、サミュエルソンが当時この種テーマについて連続して寄稿していた英国の経済誌、これを選択しました。ただ当時は、この経済誌を定期的に図書館経由で手に入れるのがまだ容易な環境ではなかったこと、また、身分不相応なテーマに四苦八苦し、最後は、今は亡き当時の入江ゼミ天野助手(後の神戸大学名誉教授)の岡本梅林の新婚宅に転がり込んで、指導を受けながら悪戦苦闘の末に、そのレベルはともかく、何とか卒論を仕上げた時の達成感は、卒業後55年を経た今日でも鮮明に覚えています。

 文部科学省による「教育、研究、地域貢献」という高等教育界のミッション再定義のなかで、大学自らが、自らの立ち位置を明確にすることが求められています。この会誌が皆さまのお手元に届く頃には、4月に就任される次期学長も決まり、新旧両学長の連携の下で、平成28年度にスタートする第三期中期計画の議論が始まっている筈です。これら議論のなかで、逞しい母校の明日の姿が浮かび上がることを希い、凌霜会関係者も傍観者で終わることなく、強力な応援団として引続き機能することを目指し頑張りたいと思います。国の予算が限られるなか、卒業生はじめ関係者の間に寄附文化を育み、強化することが大きな課題であることは、アメリカのアイビーリーグの例を挙げるまでもありません。あの保守的な英国においてさえ、アメリカ同様の動きが広がっていることはご存じの通りであります。社会科学系部局への助成を主たる使命とする六甲台後援会においても、教職員、凌霜会会員一体となってこの実現に邁進しなければなりませんが、基本は、これら文化の担い手である凌霜会会員の増強であります。現在、平松副理事長を委員長とする「会員増強対策実行委員会」において、職域、支部単位での会員増強に向けた草の根運動を展開しています。委員各位のご尽力で貴重なデータが集まり、凌霜会の財産としてその姿を現しつつありますが、植木に水をやる如く、根気強い運動の継続が必要であります。他大学においても、大学・卒業生が一体となってこの種事業を推進しています。「東大全都道府県に組織」「OB企業人が講座」「学生集め同窓会が応援」といった言葉が新聞紙面を賑わせています。

 昨年のホームカミングデイをきっかけとして、34年卒の「三四会卒業55周年傘寿祝」、36年卒の「凌霜36会喜寿を祝う集い」、39年卒の「50周年記念の集い」、49年卒の「卒業40周年記念同期会」など多くの同期会が開かれました。絆の強化に向けて、今後ともこのような流れが定着することを願い、併せて、会員増強運動の一助となることを期待して止みません。

 一方で、社会科学系部局に対する助成事業のありようも時代の変化に合わせ、また、公益法人としてのガバナンス強化の観点からも、適宜見直していく必要があると思っています。約1年前から、中野六甲台後援会常務理事を委員長とする助成事業選考委員会で議論を始めていただき、並行してそれを側面的にサポートする理事長直属のアドバイザリーボード(委員長は熊谷六甲台後援会理事)を昨年9月に設置、10月15日には、時宜を得た「助成事業の運用に関する検討の答申」をいただきました。今後は、この答申をベースに、理事会と助成事業選考委員会が連携し、助成対象の拡大・入れ替え、対象決定までの事務の流れの客観性の一層の向上、対象事業及びその成果の凌霜誌等への公開など、一連の作業を順次進めて参ります。

 今年1年も課題は山積しています。凌霜会諸兄姉の変わらぬご支援、ご協力を宜しくお願い申し上げます。本年が会員の皆さまにとってよき年であることを心より祈念申し上げ、併せて、母校神戸大学の飛躍の年となることを衷心より願い、新年のご挨拶と致します。